しなやかな貴金属

淀みのrhythmからなる雪隠

わたしたちは、断固として、論理を拒否します。

すべての選択肢たちは、常に、間違えている。

正解がないという正解から目を背け続けた結果が21世紀の堕落だとしたら、一体全体どうすればよいのか。これから、意味が過剰だった世界を、また一つの円環に戻す作業が始まる。とりあえず、真摯な旅人であることでしか、わたしたちが報われないのは確かだ。

 

久しぶりに新宿を散歩した。おおきな家とちいさな家、あたらしい家とふるい家。雑多な街を這う坂道を、都庁を北極星にしてぐるぐる回る。スマートフォンを捨てて、行く宛もなく、ただ足を前に運ぶ。人生には、行き止まりはないけれど、出口もない。わたしは心を置き去りにして、歩く。

 

今日のあいにくの曇天模様は、人気のない真昼の住宅街をまろやかにモノクロで包み込み、塞いだ。生活が全く匂わない角ばった無機物たちが、視界を徐々に狂わせていくのを感じる。わたしたちが閑静な住宅街と呼んでいるのは、太陽に見捨てられたこの建物たちの鬱結した沈黙のことなのだと、ふと思った。

 

人間が犯す間違いには、2種類ある。全身全霊で正しいと信じていたものに裏切られることと、間違っていると気づきながら間違い続けること。もう、いいかげん後者のような人生はうんざりだ。

 

生きることは、辛く虚しい。だから、何もかもが間違っているこの世界で、わたしは正しくありたいと強く願う。世界に裏切られることで、わたしたちはまた正しく間違いを犯すことができるのだから。

 

鋭く視界が開け、代々木駅の改札が見えた。建物の体温がだんだんと漲ってくるのを感じる。言葉を介さずとも、人々はすれ違うだけで感情を摩擦し、熱を発し、周縁を赫くする。

空をもう一度見たくなって、止めた。

 

わたしたちは、断固として、論理を拒否します。