しなやかな貴金属

淀みのrhythmからなる雪隠

愛のない消費者金融はCMに粗品を出せ

「そこに愛はあるんか?」

 

コロナ禍とウクライナ情勢の余波を受け、逼迫した家計が増える中で、消費者金融各社は着々と業績を伸ばしている。一例を上げると、2023年3月期のアイフル社の業績予想では、純利益(親会社株主に帰属)は前期比170%超を見込む。

 

グレーゾーン金利や悪質な景品表示が常態化していたブラックな業界にも法令遵守の波が押し寄せ、表立って劣悪なサラ金はほぼ消滅した。その中で、奴らはどのようにして事業を拡大しているのか。現代の消費者金融は、コンプライアンスというルールの中で如何に弱者から搾取するかというゲームに移行した。主な3つの方略を以下に記す。

 

 

1つ目は、無人契約機だ。消費者金融業界は、債務者の「恥」の感情に付け込み、無人契約機を発明した。一発逆転思考の見栄っ張りにとって、行政の窓口に行き、真っ当な人生を歩んでいる公務員に施しを請うことは、死ぬより辛い。その延長線上で、消費者金融の受付にさえも、引け目を感じる。そんな対人不安が強くプライドの高い人間が追い詰められた時のために用意された「楽な逃避先」が、無人契約機である。土壇場の人間の脆弱性を的確に突いた醜悪なシステムによって、親族からの借金や銀行ローンとの差別化に成功している。

 

 

2つ目は、インターネット広告だ。実は、消費者金融の広告については、いくつか業界規制が存在する。具体的には、7時〜9時、17時〜22時は未成年への悪影響を鑑みてTVCMを打つことはできない。また、22時〜0時でも広告本数が制限されている。しかし、ネットの世界には、時間帯の制限など存在しない。それだけではなく、属性による細かなターゲティングが可能である。衝動性の強い、金融弱者をターゲティングし、際限なく打たれるインターネット広告。もちろん未成年もお構いなしなのも問題だが、奴らのマーケティング戦略からは、それ以上の弱者を搾取しようという企図を感じる。

 

 

3つ目は、イメージ広告だ。これがいちばん重要で非人道的である。消費者金融の多くは、健常者っぽい男女が愉快に短いフレーズを叫ぶ、イメージ広告戦略を取っている。金利やサービスの優位で消費者に訴求することはない。とにかく好感度の高い芸能人を起用し、単純接触効果で社名を脳に刷り込む。こうすることで、我々は皆、いつか困窮したときに、自然とサラ金という選択肢が頭に浮かぶような体に作り変えられるのだ。

 

大地真央アイフルを使うことはない。今までも、これからも。にこやかにレイクアルサと呟く筧美和子が多重債務者になる可能性が存在するのは、闇金ウシジマくんの世界だけだ。LINEポケットマネーのイメージキャラクターである川島明は、特に必要もないけど吉本興業から付き合いで50万借りたというエピソードがあり、最もサラ金から遠い人種といえる。

 

自らのサービスのデメリットを隠しがちなのは商売の常であるから、否定はしない。しかし、メリットすらありのままにプレゼンできないサービスは、存在価値すらないブルシットジョブだ。空虚を功として宣伝している。誇大広告とかのレベルの話ではない。

 

ふざけるな。正々堂々、粗品や鈴木もぐら、カンニング竹山を起用して勝負すれば良い。彼らは消費者金融のお陰で人生を食いつなぎ、ビッグドリームを掴み取った(つつある)のだから、ある意味で最高のロールモデルであり、正しい広告のあり方である。

 

実際に使い、酸いも甘いも知り、それでも消費者金融を愛してくれる人間こそ、広告塔にふさわしいのではないか。数百万単位の借金を返済した人間の肉声こそ、サービスの魅力をより正しく、より芸術的にプレゼンできるに決まっている。


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以上の3点が、消費者金融が適法で弱者から搾取するための方略である。つまり、資本主義には、アートがない。資本家のつく嘘からは、クリエイティビティを感じない。自由主義にシステム化させた人間の欲望は、乾ききった消費者を無意味に貪り食うことを選んだ。そこに愛は、ない。